一日にしてオーストラリア全土から袋叩きにあい閉店した差別カフェの真実

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ここオーストラリアは、本当に多文化・多民族国家です。
人種や言語、宗教や文化など多様性に富んでいて、2011年に日本から移住してきた私には、みんなが一緒じゃないことがとても面白い。
何かで読んだんだけれど、ある統計では、オーストラリアに住んでるうちの5人に1人が他の国で生まれてここに住んでいるらしい。

それくらい、たくさんのバックグラウンドの人たちで成り立っているせいかしら、この、人種や宗教、文化などに対する差別意識にとても敏感な人が多く、そして法律でも厳しく守られています。

まあ、実際私が感じるところ、個人的な好き嫌いはみんなそれぞれあるけどねー

ところで、さかのぼること2014年、シドニーのとあるカフェが一日にしてオーストラリア全土から猛バッシングを受け、結果、その3日後にひっそり店を閉じました。

そのカフェは、シティからもほど近いその場所で5年以上営業を続け、美味しい料理、お酒、そしてオリジナルコーヒーを提供する、ローカルの住人はもちろん、近くで働く人や美大生にとても人気でいつも混んでいて活気のあるお店でした。
ちょうどこの事件が起きる1年ほど前、新しいオーナーに経営が変わり、スタッフの人員も増やしている矢先に、この事件が起き、そして幕を閉じたのです。

このカフェのオーナーは、当時、バリスタ(コーヒー作る人)ポジションの募集を広告に載せていて、そこに、肌の黒いブラジル人の男性がカフェに面接に来たのです。

ところが、このカフェのオーナーは席につくなり、彼にこう言ったのです。

「うちのお客さんは白人が多いから、
きっと肌の黒い君の作るコーヒーは飲みたくない。
だから、君を雇うことはできない」  と。。

そうです。笑っちゃうくらい、まさかの超ダイレクトな差別発言!!!!!

そんなことを言われた彼は、そのまま席を立ち営業中のカフェの中へと進み、多くのお客さんがいる前で、たった今、自分に起こった差別発言を涙ながらに説明しました。

その場で直接その彼をなぐさめる人もいれば、まさか本当にそんなことを言ったのか、とオーナーに詰め寄る人、そのほかのお客さんも全てみな一斉にお会計を済ませ、お店から出て行ってしまいました。

そしてこの出来事は、マルチカルチュラル(Multi-Cultural)と呼ばれるこのオーストラリア全土に大きなニュースとして広がったのです。

当時、私はこのカフェで働いていました。

スタッフの国籍は、多種多様。
オーストラリア、イングランド、ニュージーランド、フィリピン、イタリア、フランス、韓国、アイルランド、ドイツ、タイ、日本 etc とにかく多国籍です。
当然、スタッフの中には、肌の黒めの人もいましたし、いわば私も黄色い人種です。

事件が起きたこの日この時、私はこのカフェで働いていましたが、自分の仕事で忙しかったためにいったいなにが今目の前で起きているのか理解できず、明らかに様子がおかしい状況をポカーンと眺めていました。
どうやらシリアスだとは察したんですが、いまいち英語が理解できてなかったんですね。。
当時、あの瞬間分かっていたことといえば、
さっき黒っぽい人が来てオーナーとテーブルにつき、話をしていた。
ところが数分もしないうちにその彼が急に立ち上がって、お客さんの前で何かを話し出した。
私は何かのパフォーマンスか、営業かなにか、それくらいにしか思っておらず、あれ、、、なんだこの人、急になにか始めたぞってなくらいでした。

彼の涙ながらのその訴求後、そこそこ忙しかった店内は一気に空っぽになりました。
さっきまでランチを楽しんでいたお客さんは全員ものの見事に去ったのです。

実は、このカフェのオーナー、普段からそうとうにずれた感覚を持っていたので、私たちにとっては、今回はさすがに酷いと思いながらも、若干彼の非常識発言に慣れた気分でいたことも事実で、この件も常連客が多少減っちゃうのかな、くらいにしか思っていませんでした。

ところが、なんと間がいいというか悪いというか、事件当時、被害を受けた彼の後を去ったお客さんの一人に、まさかライターの人がいたんですね。そして始終を取材し、結果、翌朝このニュースが全豪に流れたのです。

人種(黒人!)を理由に採用を断った、差別カフェ!   と。。

冒頭に伝えた通り、この国は多文化・多民族国家なので、差別にはとても敏感です。
このニュースはまさにこういった背景の中で、水を得た魚のように飛び跳ねて、各マスコミがこぞってこのセンセーショナルなニュースを追いました。

私が翌朝の6時半に出勤した時には、(引き運が強いことに事件当日も、その次の日も、そのまた次の日も私は出勤だった)もうすでにカフェの前に取材クルーがたくさん集まっており、店の前から中継も出たほど。

カフェの開店から数時間がして、当事者のオーナーが顔を出しました。

ところが、もう本当に笑っちゃうんですが、このオーナーの彼、なんで自分の発言がこんな大騒動を巻き起こしているのか、まったく理解できてなかったんです。

なので、たくさんのマスコミが取材に訪れたこの日でさえ、まさかのテレビカメラの目の前で、同じ論理、言い訳を繰り返したのです。
自分のお客さんのために自分はビジネスをしていて、
私のお客さんは白人だ。だから黒人は雇わない、と、、、、自信を持って力強く。
当然、この追加発言はさらなるバッシングの波を煽りました。

ところでなぜ、このオーナーが、こんな呆れた、思っても口に出すのをはばかる、ザ、差別発言を繰り返したのか。


実は彼は人種差別主義者なんかではなく、ただの無知で無学なだけだったんです。

このカフェのオーナー、中国から1年前にオーストラリアにきてこのカフェの利権を買ってビジネスを始めただけで、オーストラリアの、この差別に敏感な背景を知らなかったのです。そして、自分がオーナーなんだから自分が雇いたい人を雇うのが当然だ、と繰り返したのです。

私も現場にいたスタッフも全員、もう何が何だか唖然です。
ニュージーランド出身のスタッフは、この中国人オーナーにも分かるように、いかに彼の発言がこの国では危険なことか、言葉を選びながら、ゆっくり説明をしていました。
まるで子どもに世の中のルールを教えるように、とても丁寧に。

その日、多くのマスコミが追加取材に訪れる中、このニュースを最初に記事にしたライターもお店に訪れました。

彼は、その時にはもう、このお店のことを心配しており、今すぐにFacebookなりWebsiteなりを閉じるようアドバイスを寄せ、オーナーが実際のところ、差別発言をしたくてしたのではない、ということを理解していたようでした。もう十分に遅すぎたけれど。

世の中は理不尽なことも多く、なんというか接客業ならば、多少容姿のいい人なりが仕事を見つけやすいだろうし、雇う側の好みは当然採用に反映する。
実力や経験があっても採用されない場合もあるし、可愛けりゃOKなんてことも日常にはあり得ることです。
けれど、容姿や人種、年齢などを理由に採用不採用の判断にしてはいけない、一応、タテマエ上。

1日にして、ウェブ上のカフェの評価は、4ポイントから1ポイントまで急降下しFacebookのカフェのページには、見事なまでの誹謗中傷のコメントが並びました。まさに、大炎上。

そして、
2日後の朝、私が出勤した時には、カフェのすべての窓ガラスに生卵が投げられていた。
私ともう一人のスタッフで、汚いままじゃあれだから開店前に窓の掃除をしたんだけれど、
タチの悪いことに、投げた人はまるでプロの仕業のごとく、生卵には小麦粉も一緒に入れられていて、キレイにするのにとても時間がかかった。

私も一緒に窓掃除をしたスタッフも、しょうがないね、と笑っていました。
さすがにここまでくると、笑っていないとキツかった。

オーナーからは、そこまでさせてごめん、なんて言葉をもらったけれど、この猛バッシング、袋叩き状態は、正直、私に何が正義だかわからなくさせました。

彼の発言は幼稚でバカバカしい。まともな人なら普通は当然避ける発言です。
だけれど、なぜ彼がこんな発言を繰り返したのは、前述の通り、人種差別主義者なんかではなく、ただ無知で無学だっただけ。
けれど誰も彼のその言葉の背景には当然ながら目もくれず、マスコミが一方的に書いた「Racist」というキャッチーな記事を読みながらただただ、この差別主義者め! この国からとっとと出て行け! ざまーみろ!!と誹謗中傷が繰り返されたのです。
その中には、中国人はどうのこうの、とまさかの差別発言を重ねる始末。

そして今でも忘れない、
オーストラリアのニュースを伝えるある日本人のブログでも、この一連の騒動に言及している記事があり、そこにはやはり、そんな店つぶれちゃえ、とあり、そして日本人がバリスタとして働いていたらしいけど、今ごろファーム行ってたりしてw、とまでのたまっていた。
私は彼のコメントを読み、これもまたファーム労働者に失礼きわまりない発言だ!と憤慨し、彼のその記事に何かを残そうかとも思ったけれど、この騒動は私のパワーをあまりにも吸い取ったので静かに過ごしました。

この事件後、お店の常連さんのほとんどが去りましたが、一部では彼のことを理解しようとし、そして彼の間違いを正そうとし、一緒に頑張ろう、という人さえいました。とてもとても少なかったけれど。

そして事件から3日目の夜、「お店を閉じることにしたから給料を取りに来て」と
オーナーから連絡を受け、そして、そのお店は幕を閉じました。

一躍、時の人となったバリスタポジションの面接に来たブラジリアンの彼は、この一連のニュースの後、仕事のオファーを10件以上も受けたと記事が出ていました。
奇遇にもこの閉じたカフェから徒歩5分のエリアで仕事を始めたそうです。

急に職を失った私はこの後、1ヶ月間、仕事探しに時間を費やしました。
こんなにも有名になってしまったこのカフェで働いていたことを、なんとなく隠しながら。

こんな滅多な経験は願ってできることじゃないけれど、このオーストラリアの差別に対するものすごく根強いアンチパワーを見せつけられ、そして巻き込まれ、しばらく滅入りました。

数年が経ち、こんなこともあったなと、今こうして、ブログの記事にしています。

私は今でも覚えています。
あのオーナーはバツが悪かったり何か言いにくいことがあると、自分の禿げた頭をすりすり手で撫でる仕草をよくしていましたが、あの面接が行われたたった数分間にも、彼がその頭をやたらすりすりしていたことを、私は視界のスミに捉えていました。
当時、もう少し私の英語力と大きな勇気があれば、テレビカメラの前で彼をかばえたかもしれない。
彼は差別主義者なんかではなくただの無学な愚か者なんだ!と冷静に。いや、荷が重すぎるな。
Steven、元気でいますように。

当時の実際のネット記事は、
「Forbes&Burton」「racist」と検索すると2019年の今でも読むことができます。
英語の勉強に、興味があればどうぞ。

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コメント

  1. アバター より:

    このお話は知りませんでした。
    しかし、中国の人はこんなかも 笑
    是非読んでみます、面白いエピソードでした。

    • アバター ローラ より:

      nさん、1年ほど前、ブログに起こしてみたものの、図らずも得てしまった負の衝撃が強すぎて読み返すことを躊躇していたのですが、nさんのコメントで読み返すことができました。&あっさり克服できた気分。ありがとうございます。
      そうなんです、中国の方はそんなもん。育った環境、背景、価値観がワールドワイドと違いすぎる。

  2. アバター より:

    ローラさん、早速のご返信ありがとうございました。
    そんなに衝撃が強い事件だったのに、私がコメントしてしまって思い出させているのは
    何だか、悪いようなオカシイような。。
    色々と読ませていただいていました。
    先ほどマリワナについて検索していて、こちらにたどり着きましたが
    マリワナをしないので匂いが分からないのですが、引っ越しをしてから夜間や昼などに
    変な匂いが漂ってきて、少々不快でした。。
    夜に出歩くこともないので、そういう遊びをしている人も見ることもない日々を過ごしています。
    私はSAにいるのですが、日中買い物などしていると麻薬患者らしき人々をよく見かけます。
    よく観察されていますね、興味深いお話ありがとうございます。
    。。。良い年の瀬を。。。

    • アバター ローラ より:

      nさん 私は大丈夫です。ありがとうございます! いろいろとコアな検索をされているんですねw そういえば、キャンベラではマリワナの栽培が2株まで許されているという情報、後追いリサーチするの忘れていました。 日本では考えられないことなので、追ってまた記事にしたいと思います!!
      nさんも、良いお年を!!